2ストのバイクが好きです



 HONDAが4スト 50CC 水冷のエンジンを搭載したエコロジー・スクーターを発売するそうです。同じくHONDAはAR燃焼方式を採用したCRM250の生産を中止するらしいし…。いよいよ2ストバイクはなくなるかもしれません。でもボクは、何と言っても2スト車が好きだなあ。大方のライダーにとって2サイクルエンジンのイメージはけっして良いものではないはず。いわく「エンジンオイルが飛んで汚い」「燃費が悪い」「白煙が出る」「環境に悪い」…等々。中でも、バイクに一家言のあるマニアの多くが「2ストは面白味がない」と言います。つまり、味のあるバイクというのは、4ストの単気筒だったり、ツインだったりするわけで、2ストなど眼中にない"こだわりライダー"がけっこう多いようです。2スト=高回転型エンジンでブンブン回る…というイメージは、非常に一般的みたいですね。

 2スト嫌いのみなさん、2ストは本当に汚くて環境に悪いのでしょうか。いやけっしてそんなことはありません。NOXなどは4ストよりも排出量が少ないし、CO2に関しては4ストとほぼ同程度です。HC(ハイドロカーボン)排出量のみが4ストより大幅に劣っている、というのが実情です。このHC部分のデメリットのみで、2ストが消える運命にあるとすれば悲しいことです。
 燃費については、一概に比較はできません。250CC程度のバイクで、4ストの高回転型マルチと比較すれば、同排気量の2ストエンジンの方が中・低速トルクが大きく、結果的に街乗り時の燃費がよいケースがあります。
 こうした細かい部分の反論はさて置き、2サイクルエンジンは、4サイクルエンジンと較べて、バイクのエンジンとして決定的に優れた部分がいくつかあるのです。

 まず第一に部品点数が少なくて構造がシンプルである点。考えて見てください。4サイクルエンジンは、ピストン2行程で1回転です。2サイクルエンジンは、ピストン1行程で1回転です。4サイクルエンジンには、カムシャフトやら、タペットやら吸排気弁を動作させるためにたくさんの可動部品がついています。それに較べて2サイクルのリードバルブなど、バカみたいに単純な構造でしょう。
 4輪車とバイクの決定的な違いは"シンプルかどうか"にあります。別な言い方をすれば、路上を走る乗り物としてのバイクのアイデンティティは、"4輪車からどこまでかけ離れた存在か"にあると思っています。たくさん人が乗れない、たくさんの荷物が積めない、雨が降ったら濡れる、走ることを目的とした機能しか持っていない…といったバイクは、基本的にはシンプルな乗り物なのです。ライフスタイルのシンプルさと、バイクというシンプルな乗り物を選択するメンタリティ…との間には、明らかに関連があります。部品点数が少なく構造が単純なエンジンは、バイクという乗り物に本質的に合っています。つまり、2サイクルエンジンはバイク向きのエンジンだと考えています。
 次に、2サイクルエンジンは小さく軽量な点で優れています。重量当たりの平均出力は、4サイクルを大きく上回ります。これは、上記のシンプルさをよしとする考え方では、ごく当たり前のメリットでしょう。バイクは軽くて小さいから良いのであって、ガタイが大きくなり、装備が立派になるに従ってバイクは4輪車との差が徐々になくなってくるような気がします。
 そして、先に書いたように、2サイクルエンジンは中・低速トルクが4ストよりも大きい点が、バイク用エンジンとして優れていると思います。これは、乗りやすさと速さを両立するための必須の条件です。

 でもボクは、本当はもっと感覚的な部分で2ストが好きなのです。2スト用エンジンオイルが燃える匂いが好きです。昔から、カストロールなど植物性のオイルが燃える匂いには胸がときめいたものです。バイクが走り去った後に残るかすかな煙と匂い…、これは大好きです。
 2ストエンジンの音も好きです。高回転時の「カーン」と言う音、低回転時の「ボッボッ」という音、どっちも大好きです。

 こうした2スト礼賛については異論のあるライダーも多いでしょう。でもあくまで個人的な意見だと思って下さい。別に誰がどう思っていても構いませんし、議論する気もありません。バイクに乗る…という行為は、所詮は個人的なものです。みんな自分が好きだと思うバイクに乗ればいいよね。

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